釈尊の誕生を祝う行事で、「灌仏会」「浴仏会」「仏生会」「竜華会」または「花まつり」と呼ばれ、「成道会」「涅槃会」とともに、釈尊の三大法会の一つである。
釈尊は浄飯王を父とし、摩耶夫人を母として誕生し、姓をゴータマ、幼名をシッダルタといった。摩耶夫人は出産が近づくと、土地の習慣により、実家のあるカピラ城の東、コーリヤ族の町に向い、途中ルンビニーの花園で休まれた。身を洗浴し、花をとろうとした時、右脇より太子を出産される。釈尊の誕生を祝って、空から竜王が甘露の雨を降らせた。それが甘茶の由来となり、ルンビニーの花園を型どったのが花御堂となって伝わっている。
4月8日灌仏の行事はインドにおいても古くより行われ、中国へ渡り、わが国では推古天皇の14年(606)に始まる。宮中においても、仁明天皇(840)律師静安を請し、清涼殿にてとり行う記事が見られる。諸寺においては、奈良時代、東大寺にて、また鎌倉、室町と盛んになり、徳川時代には、大奥にても修せられた。
灌仏会の行事には、屋根と四本の柱を花で飾った花御堂の中に、銅製の小さな盆を置いて甘茶を湛え、中央に釈尊の誕生仏を安置して本堂前にまつって法会を行い、「浴仏偈」を唱えて小杓をとって甘茶を仏頂に灌ぐのが普通である。寺ではこの日多くの甘茶を用意し、参詣者はそれを家に持ち掃り、家内一同分かち飲むのが習わしである。古来この甘茶に墨をまぜ「千早振る卯月八日は吉日よ、かみさげ虫を成敗ぞする」という歌を書き、柱に貼れば害虫駆除に効があるといわれる。また「八大竜王茶」と書いて天井に貼れば、雷の災を免れると信じられた。